いつも鞄には財布とスマートフォンに、メモ帳と万年筆。
メモは専ら手書きになった。
以前まではスマートフォンのメモ機能を利用していたが、
スケジュールは間違えるし、漢字を忘れる。
何より打たれた文字は無表情で、それを見返すことが少なかった。
お気に入りのメモ帳と万年筆をすすめる。
“お気に入りの”というのがポイントで、高価なものでなくても
書きたくなる道具であることか重要。
例えば、蛙のイラスト入りメモ帳、名入りの万年筆。
街を歩いていても鞄からそれを取り出して、ふと自分の感情を書き記す。
書きたいがために、街をキョロキョロすることも増えた。
書いてしまったら消すことが出来ないので、ペン先が紙につく前に一呼吸。
自分の感情が起こった順番に紙の上に残っていく。
クリアもコピぺも出来ない。格好つけた文章でない、正直な自分の姿。
数ヶ月してそれを見返したときは、きっと恥ずかしそうに笑うか、
鏡を見て襟を正すことになるだろう。
仕上がっていくメモ帳は人生のあんちょこ。
絵よりも直接的で、写真よりも鮮明に道をつくる。
心の出来事を残したい。
温度のある文字で。
写真、文 鈴木猛利